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【はじめの一歩】Round1510 仁王立ち “ボクシングを倒す!”

はじめの一歩
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ボクシングをしばき倒す

ボクシングで天下を獲りたい。その一心で拳を振るってきた千堂武にとって、どうしても超えたい、逆に越えられなかった壁が二つある。

ひとつは“世界最強”と謳われ、誰の拳も届かない王者リカルド・マルチネス。

そしてもうひとつは、自分を二度も叩き落としたライバル――幕之内一歩だ。

千堂が初めて一歩と拳を交えたとき、彼はすでに西日本を席巻するスターで、「浪速のロッキー」と呼ばれていた。破壊的な左右フックで相手をなぎ倒す喧嘩殺法。

その勢いのまま、日本フェザー級トップへと駆け上がり、一歩との初対決に挑んだ。だが試合は激闘の末、一歩の“真っ直ぐでひたむきなボクシング”に押し切られる形で敗北。

圧倒的なパワーと強心臓を誇る千堂でさえ、努力の塊である一歩の積み上げには及ばなかった。

それでも千堂は折れない。拳で証明するしかない男だからだ。二度目の再戦に向けて、さらに喧嘩の匂いを纏った攻撃的ボクシングを磨き上げ、世界に届く力を身につけようと必死にもがいた。

そして迎えた再戦――あの死闘は、彼の人生の象徴である。打ち合いに次ぐ打ち合い。

どちらが倒れてもおかしくない極限の消耗戦。しかし最後に倒れたのは、やはり千堂だった。

勝負を決めたのは、一歩の執念ともいえるボディワークと、積み重ねてきた練習量そのものだった。

千堂の中には、今でもあの二敗が刺さり続けている。だからこそ、リカルド・マルチネスという絶対王者を前に、千堂は悟る。

「ボクシングで勝てへんなら、ボクシングそのものを倒したる」。

常識に従ったら勝ち目などないなら、己の信じる喧嘩ボクシングでぶつけるだけだ。

仁王立ちでリカルドの動きを遮り、堂々と受けて立つ姿は、敗北を積み重ねてもなお折れない千堂そのもの。

彼は世界最強の王者に向かって開き直る。

「ボクシングじゃ勝てへんのやったら、ワイは“千堂武”の戦い方で倒す!」

二度一歩に敗れた痛みを胸に刻んだまま、千堂は今日も拳を振るい続ける。

喧嘩の匂いを纏ったその拳は、ボクシングさえも飲み込まんと輝きを増していた。