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あしたのジョー2 アニメ 14話 感想 どこにある・・・ジョーの青春 “真っ白な灰になるんだ”

あしたのジョー2
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紀ちゃん、ボクシングは・・・

拳の匂いが、まだ指先に残っている。
その匂いごと、生きている――そんな男だった、矢吹丈は。

丹下段平の代わりに、カーロス・リベラ戦の残りのファイトマネーを受け取りに現れたジョー。
白木ジムの静まり返った空気の中で、白木葉子は一枚の小切手に、ほんの少しだけ“心”を上乗せしようとする。

だが――

そのわずかな厚意は、ジョーにとっては“汚れ”だった。
拳で語り合ったものに、後から色を足されることへの、激しい拒絶。

「ふざけるなよ……」

低く、しかし刃のように鋭い声。
それは金額に対する怒りではない。
誇りに触れられた男の、どうしようもない反射だった。

葉子は知っている。
彼がどれほど純粋に、拳だけで世界と向き合っているかを。
だからこそ、その怒りの意味も理解してしまう。

それでも――

わかり合えない。
近づけば、必ずどこかでぶつかってしまう。
まるで、決して交わらない軌道を持つ星のように。

その日。
海の向こうでは、無冠の帝王カーロス・リベラが、王者ホセ・メンドーサに挑んでいた。

ジョーが背を向け、去ろうとしたその時。
血相を変えたマネージャーが駆け込んでくる。

勝利の報せ――
誰もが、そう信じて疑わなかった。

だが現実は、あまりにも冷酷だった。

わずか一ラウンド、たった一分三十三秒。
カーロスは、沈んだ。

あの、太陽のように明るく、しなやかだった男が。
リングの上で、あまりにもあっけなく。

さらに追い打ちのように告げられる真実。
彼は、ホセに負けたのではない。
その前に――すでに壊れていたのだと。

日本の一人のボクサーに。
矢吹丈という、ひとりの男に。

ジョーの中で、何かが音を立てて崩れた。

ウルフ金串。
力石徹。
カーロス・リベラ。

拳を交えた者たちの顔が、順番に浮かび、そして消えていく。
まるで、自分の背後に積み重なった影のように。

「……みんな……」

言葉にならない。
ただ、立ち尽くす。

そのまま、ジョーは白木ジムを後にする。
振り返ることなく。

葉子は、その背中を見つめていた。
追いかけることも、呼び止めることもできずに。

彼女の中で、ひとつの確信が芽生えていた。
この男は、遠くへ行く――
誰の手にも届かない場所へ。

それでもなお、彼女は手を伸ばす。
世界という舞台へ。

やがて段平に語る。
日本ではない、その先へ。
ホセ・メンドーサという頂へ。

それは、希望の設計図でありながら――
同時に、破滅への航路でもあった。

白木葉子。
彼女はジョーにとって、光だったのか、影だったのか。
導く女神か、それとも奈落へ誘う存在か。

きっと、そのどちらでもある。

一方で――
もうひとつの“静かな想い”があった。

林紀子。
紀ちゃん。

彼女の視線は、いつだって優しかった。
見返りを求めず、ただそっと、寄り添うように。

だがジョーは、それに気づかない。
いや、気づけない。

彼の世界には、リングしかないからだ。

数日後。
ふたりは、ほんの短い時間を共にする。

最初で、最後の“デート”。

並んで歩くその時間は、どこか不器用で、ぎこちない。
けれど紀子にとっては、それだけで充分だった。

ただ――
彼女の胸には、消えない不安があった。

日に日に痩せていくような、ジョーの影。
傷つきながら、それでも前へ進もうとするその姿。

「もう……やめて」

絞り出すような声。
願いというより、祈りに近い。

だがジョーは、首を横に振る。

やめられない理由がある。
背負ってしまったものがある。

そして何より――

好きなのだ。
どうしようもなく、ボクシングが。

その言葉は、あまりにもまっすぐで。
あまりにも残酷だった。

やがて、ジョーはぽつりと呟く。

燃え尽きたその先には、何も残らない。
未練も、後悔も、形あるものはすべて。

残るのは――

真っ白な灰だけ\text{真っ白な灰だけ}

その瞬間。
紀子の中で、何かが静かに終わった。

ああ、この人の隣には――
自分の居場所は、ない。

どれだけ手を伸ばしても、届かない。
この人は、自分の内側で燃え続ける炎そのものだから。

「私……ついていけない」

涙は、こぼれなかった。
ただ、優しく微笑んで。

そして、背を向ける。

好きだった気持ちに、そっと蓋をして。

去っていく紀子の背中を、ジョーは見ない。
いや、見ないようにしていたのかもしれない。

振り返れば、きっと――
迷ってしまうから。

拳でしか、生きられない男。
その業の深さを、誰よりも理解していたのは――

もしかしたら、紀子だったのかもしれない。

そしてジョーは、さらに深く、リングへと沈んでいく。
まるで、自ら望んだ過酷な運命に引き込まれるように・・・

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