引退試合は皇帝グンター
WWEの象徴として、長きにわたりプロレス界の中心に立ち続けたジョン・シナ。
世界王座17度という、歴史そのものを塗り替えた偉業を成し遂げた男が、とうとう最後の戦いへと歩みを進めつつある。
その相手として名乗りを上げたのが、ザ・ラストタイム・イズ・ナウ トーナメントを制した“皇帝”グンターだ。
フィジカルの強さは現WWEでも群を抜き、世界王者の実績もあり、今年はあのゴールドバーグの引退試合も務め
上げた。
【WWE】ジョン・シナ引退試合…相手はグンターに決定 7月のゴールドバーグ戦に続く〝大役〟|東スポWEB #WWEhttps://t.co/rDvpLP5qS1
— 東スポ プロレス格闘技担当 (@tospo_battle) December 6, 2025
現役最高峰の強者にして、後世へ名を残す存在が、シナの引退ロードのラストピースを担うことになったのである。
ジョン・シナという伝説
ジョン・シナがWWEに初めて姿を現したのは2002年。
スマックダウンでカート・アングルの「ルーキーチャレンジ」に挑戦し、青いトランクスに膨れ上がった筋肉を宿し、真正面からアングルに食らいついた日の衝撃は、今なお語り継がれる。
「RUTHLESS AGGRESSION(無慈悲な攻撃性)」という一言とともに、シナのキャリアは幕を開けた。
その後、ラップを武器にした“ドクター・オブ・サグラノミクス”へとキャラクターを進化させ、一気に人気は爆発。
2005年、WWE王座を初戴冠すると、そこからは完全にトップスターの道を走り始める。バティスタ、エッジ、ランディ・オートン、トリプルH、シェイマス……。
時代の代表者たちと大舞台で鎬を削り、WWEのメインイベントを常に牽引していった。
特に2007年〜2010年代前半にかけてのシナは、名実ともに“会社の顔”。
どんなブーイングを受けても、どれだけ過酷なスケジュールに投入されても、決して折れず、必ずリングに立ち続ける。その姿勢は賛否両論を浴びつつも、多くのファンから確固たる尊敬を勝ち得た。
シナは、勝つだけのスーパーヒーローではない。
戦いの裏には常に「自分がWWEを前に進める」という責任感があった。だからこそ、若手を引き上げる試合を繰り返し、オーエンズ、AJスタイルズ、ローマン・レインズ、ブロック・レスナーなど、時代の節目で必ず顔を合わせ、リングの中心で歴史を分けてきた。
2010年代後半、映画出演が増えるにつれ、スケジュールは徐々に限定的になり、WWEへの登場は特別な時間へと変化していく。
それでもシナは、節目の大舞台では必ず存在感を見せた。ユニバーサル王座戦、自身初のヒールターンを匂わせる展開、そして若手を引き立てる役割まで、ベテランとしての幅広い役割を担い続けた。
そして2025年。ついにシナの引退の時、ラストタイムがやってきた。
キャリア終盤、まさかの大ヒールターンを敢行し世界中が驚愕したが、最終章に近づくほどに徐々にベビーフェースとしての光を取り戻していく。この“らしさ”こそ、ジョン・シナというレスラーの本質だろう。
One thing has been certain for the entirety of the Last Time Is Now Farewell tour has been its finality. After Dec 13th, I will no longer compete in a @WWE ring. Thankful to all those who came along for the ride and who will be watching #SNME! Thank you @BillSimmons and @ringer… https://t.co/k8ELNbaF90
— John Cena (@JohnCena) December 5, 2025
彼はどれだけキャラクターを変えようとも、最後は必ずファンの前で胸を張り、リングの中心で正々堂々と戦う。それを世界中のユニバースが理解し、待ち望んでいる。
私にとって、ジョン・シナはWWEを見始めるきっかけそのものだった。あれはバティスタとのラストマン・スタンディング戦を見た頃。
リング上で見せた不屈の闘志、何度倒れても立ち上がる姿。
シナ、ミステリオ、ランディ・オートン……。あの頃のWWEスーパースターたちに魅了され、日本公演にも何度も足を運んだ。
リングに向かって走っていくシナの姿を生で見た日、歓声の渦に包まれるあの空気は、今でも忘れられない。
シナは“推し”という言葉では足りない。WWEという巨大なエンターテインメントの扉を開いてくれた存在だ。
そして迎える引退試合の相手は、WWEの現象と呼ばれる皇帝グンター。
最も強い者が最も偉大な者へと挑む、どこまでもドラマチックな構図だ。
シナのキャリアを締めくくるにふさわしい相手であり、勝敗以上に“二人が何を語り、何を見せるのか”が重要になる一戦でもある。
ラストタイム・イズ・ナウ・・・ジョン・シナは最後に何を見せて、全世界のユニバースにどんなメモリーをのこしていくのだろうか。