YOSHI-HASHI開幕から絶好調
新日本プロレスが誇る真夏の最強決定戦「G1 CLIMAX 35」。その開幕カードで異彩を放ったのが、ヘッドハンターことYOSHI-HASHIである。
出場枠決定戦を勝ち抜き、本戦に滑り込んだ男が、なんと鷹木信悟、成田蓮を連破し、いきなり2連勝という上々のスタートを切った。
驚きは、その勝利内容にもある。鷹木戦は4分45秒、そして成田戦に至ってはわずか1分26秒という秒殺劇。
観客のボルテージも上がりスピード感、確かにインパクトこそあれど、「G1」という舞台に相応しい濃厚な一戦だったかと問われると、どうなのだろうか。
YOSHI-HASHI「アイツ(鷹木)がまだNEVERのベルト持っている時、対峙した事があった。アイツはこうやったんだ。俺とお前の差はありすぎて話になんねぇって。(中略)誰が最後リングで勝ち名乗りを受けたか?テメーもう一回見てみろ。この俺だ。勝ったのはこの俺だ」https://t.co/QgTgJdxg0p#G1開幕 pic.twitter.com/UjvnpBVakX
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) July 19, 2025
例えば、事故や想定外のフィニッシュによって起きた意外性ならともかく、公式戦が5分未満で終わってしまうのは、年間を通じてこのG1に熱を込めてきたファンとしては、やや物足りなさを感じてしまうのも事実である。
開幕戦で劇的勝利を上げたのに、カラム・ニューマンに7分強で負けた棚橋弘至。
G1に賭ける想いや、ベテラン同士の読み合い、身体のぶつかり合いといった“プロレスの醍醐味”を、10分弱で味わえるのだろうか。
もちろん、「長ければ良い」という話でもない。25分越えが常態化すると、巡業を行うレスラーは大変かもしれない。
しかし、10分すら掛からない試合が続く・・スタミナ充分の一流レスラー、時に20分超える試合を行うレスラーがなんでそんな短時間で負けてしまうのか、不思議だ。
試合時間の短縮は選手の負担軽減やスケジュール調整の意味合いもあるだろうが、ことG1という年間最大のリーグ戦においては、むしろ「1試合をじっくり見せる」ことにこそ意義があるのではないか。
近年、プロレス全体が”スピーディーな展開”を志向しているのは事実だ。
観客の集中力の持続時間、SNS映え、興行全体のテンポ──様々な事情が絡む中、試合時間は意図的に調整されているのかもしれない。
しかし、それでもファンは、年に一度のG1、もしくは春のNJC(ニュージャパンカップ)といった大舞台くらいは、骨太なシングルマッチを堪能したいと願うのではないか。
その点、開幕戦と第2戦でいずれもメインに登場したタイチは、ファンの期待に応える熱戦を見せてくれている。いずれも20分近い攻防。
決して冗長ではなく、前哨戦からの物語を織り交ぜつつ、攻防に緩急と厚みがある。結果、タイチの試合後コメントもネット上で話題を呼び、会場でも拍手と歓声が響き渡っている。
タイチ「実力があるから、運もついてくるんだろ?全部、俺についてきてる。次も全部、今後勝ち進んで、決勝……優勝。史上最高年齢で。更新してやるよ。こんだけ応援してくれた北海道のみんなのためにも、北海道出身レスラーとして初の栄冠、手に入れてやるよ」https://t.co/yHLYCQKlxj#G1CLIMAX35 pic.twitter.com/sIVGGqd3Wg
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) July 20, 2025
グラウンドの攻防がない。立ち上がりからハイペースのラッシュが続く。
まるで「試合時間を抑えろ」というお触れでも出ているかのようなショートタイム試合。
試合が短い=悪、とは断じないが、やっぱりファンは選手がぶつかり合う試合を長く見たいのではないだろうか。
プロ野球だって、試合時間が3時間半、時には4時間を超える。試合の間に山あり谷ありがあり、最後に勝敗が決まるからこそ、観客は酔いしれる。
プロレスもまた、「構築された物語と、その結末」を楽しむスポーツ・エンターテインメントである以上、やはり“試合時間”はその一要素として重要な意味を持っている。
今後、YOSHI-HASHIがこのまま5分前後の試合を重ねていくのか、それとも次第に15分、20分超のロングマッチに突入していくのか。
今の彼の好調さを考えれば、試合時間が伸びても、内容面での説得力は増すはずだ。
むしろ短時間での勝利が続いたからこそ、次なる長丁場の試合で何を見せるか──その“対比”が、G1におけるYOSHI-HASHIの評価を一段と引き上げる可能性もある。
G1は“激闘”の場であるべきだし、だからこそ、我々ファンは、時間をかけた攻防、体力と意地がぶつかり合う “新日本プロレスの名勝負”を見たいし、渇望している。