逸材・棚橋弘至 最後のG1
プロレスとは、年輪を重ねるごとにその深みを増すスポーツだ。レスラーの言葉でよく聞く「キャリアが大事」という言葉は、ただの経験の多寡ではない。
技術、説得力、存在感、言葉の重みすらも含めたトータルの力を意味する。
だが、そのキャリアの象徴ともいえる棚橋弘至が、「G1 CLIMAX 35」で若き才能たちに立て続けに敗れる姿は、ファンの心に一抹の寂しさを残している。
今年、2025年。棚橋は「G1最後の夏」として、リングへと向かっている。
しかし、序盤を終えた段階での星取は決して順風とは言い難い。タイチ、デビッド・フィンレーといったキャリアのある選手には勝利している一方で、カラム、ボルチン、大岩陵平と若手有望株には10分前後で敗れている。
かつて“100年に一人の逸材”と呼ばれ、新日本プロレスのエースとして長らく団体を牽引してきた男の姿、引退するとはいえ、若手世代に負け過ぎではないだろうか。
誰よりもG1で勝ち星を積み重ねている男、100勝を超えるのは間違いないだろう。
とりわけ2018年、衰えを囁かれながらも、見事に優勝し、翌年の東京ドームではケニー・オメガとの死闘を制し、IWGPヘビー級王者に返り咲いたのが忘れられない。
しかし、その肉体は徐々に悲鳴を上げ始めながら、度重なる膝のケガ、コンディション調整の難しさ、2024年は出場を逃すも、それでも今年、ラストと決めた覚悟のG1に臨んだ。
これは、単なる“出場”ではない。最後までリングに立つ意志の表明である。
【あと4日!!】
『#G1CLIMAX35』
8月1日 (金) 18:30~香川・サンメッセ香川〔Aブロック公式戦〕
・メインは棚橋弘至vs上村優也!
・タイチvs 辻陽太
・ボルチン・オレッグvs デビッド・フィンレー
・大岩陵平vs EVIL
・カラム・ニューマンvs SANADA※チケット好評発売中!https://t.co/LWrr6PjbGF pic.twitter.com/AYW8TxE5JT
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) July 27, 2025
今大会で棚橋は、若手、期待選手に金星を献上する不甲斐ない横綱が如くの闘いは、推しファンにとって“悔しい”と感じるのも無理はない。
長年棚橋を応援してきた人々にとっては、若手の“登竜門”として敗れ役の様な姿に、かつての輝きを重ねにくいかもしれない。
だが、それでも棚橋弘至は“逸材”だ。
「てめぇらの力で勝ち取ってみろ、このヤロー!」――これは、アントニオ猪木が突き上げてきた選手らへの挑発であったが、猪木問答にも参加し、そして弘至の至は猪木寛至だけに叫ばずにはいられない。
決して、「明るい未来が見えません!」ではない(笑)
残りの公式戦、おそらく辻陽太、上村優也に敗れる可能性は高いも、EVIL、SANADAらベテランには、意地を見せるかもしれない。
このバイアス掛かった予想、なんとか覆してほしい!
棚橋「凄えなあ。どんどん新しい選手が出てくる……。でも悔しいなあ。『ちょっくら優勝する』どころか、何も残してないじゃないか。だから、このままでは“棚橋弘至”はやめられない。“棚橋弘至”を終われない。『G1』残り、全部勝つ」
7.27名古屋のBSコメントはhttps://t.co/9MBbtuvkhe#G1CLIMAX35 pic.twitter.com/y7ENdaKz8E
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) July 27, 2025
思い出されるのは、棚橋が語った後世に残りそうな名言(迷言?)のひとつ。
「横一列で見てもらっては困る」
この言葉は、他団体と同目線で語られることを拒否する意思表明だった。
しかし、新日本プロレスの中で、棚橋弘至が、若手やその他の選手らと同じではないという、逸材の意地というものを魅せてほしい。
G1CLIMAX最後の夏――。
逸材・棚橋弘至が最後まで走り抜ける姿は、これから新日本の未来を背負う者たちにとって、何よりの教科書になるはずだ。
しかし、それは負けることではなく、”オレは簡単に超えさせないよ!”という強烈な意地と重爆過ぎるハイフライフローをぶちかましてほしい!!
アントニオ猪木がシングルマッチで藤波辰爾に「猪木超え」をさせなかったように。