シナが選んだラストストーリー
――ジョン・シナのヒール転向と、まさかのベビー回帰
ジョン・シナ――WWEの歴史を語る上で、この男の名を外すことはできない。
2002年のデビュー以来、WWE王座通算16度戴冠というリック・フレアーに並ぶ大記録を、17度に更新!
アメリカのみならず世界のプロレスファンに“ヒーロー”として愛され続けてきた。
だが、そのキャリア晩年に待っていたのは、誰もが予想していなかった展開だった。
「絶対にヒールにはならない」――ファンも、業界関係者も、そう信じていた。なぜならシナは、WWEが誇るスーパーヒーローの象徴だったからだ。
カラフルなキャップにTシャツ、タオルを掲げながらリングへ駆け込む姿は、子どもたちの憧れそのものであり、グッズ売り上げは常にトップを独走。
いわば「ベビーの王道」を突き進んできた存在だった。
しかし引退イヤー、キャリアが最終盤を迎えると、シナは意外な選択をする。
長年封印してきたヒールターンを敢行したのだ。
かつてラッパーキャラ“ドクター・オブ・サグラノミクス”時代に見せた毒舌や反骨心を復活させたかのような、いや圧倒的にそれ以上のヒールぶりでファンの子供たちにさえ悪態をつく。
リング上では「俺はプロレスを壊す」と宣言し、WWEユニバースの象徴を自ら破壊するかのような姿勢を見せた。
長年のシナファンにとって、それは戸惑いと驚きの瞬間でもあった。
しかし、以外にもあっさりと再びのベビーシナを思い出す。
サマースラム直前のSmackDownで、その兆候は現れていた。かつての真っ直ぐな眼差しと、観客へ語りかける言葉が戻っていたのだ。
そして迎えたサマースラム本戦。新世代の旗手コーディ・ローデスとの一騎打ちに敗れると同時に、シナは自然な流れでベビーフェイスに回帰した。
あまりに早い“変身”だったが、観客は無条件で受け入れた。
ヒールとしてどんな悪態をつこうが、シナの本質がヒーローであることを誰もが知っていたからだ。
アメリカのプロレスファンらしい、エンターテインメントを最大限楽しむ国民性もそこにあった。
そしてベビーに戻ったシナの次なる戦いは、ヒールとして共闘していたローガン・ポールとの対決だ。
舞台は華やかなパリ大会。YouTuberから転身し、瞬く間にWWEのヒール筆頭へと上り詰めたローガンにとって、シナの掌返しは到底納得のいかないものだろう。
だが、シナはリング上で鋭い言葉を突き刺し、その存在感で観客の心を一気に掌握する。
ここにこそ、20年以上トップで走り続けてきた男の凄みがある。
この一戦は単なる世代闘争では終わらない。ローガンがシナを撃破すれば、未来のWWE王座への道が大きく開ける。
逆にシナが勝利すれば、その先には常に抗争の代名詞ともいえるブロック・レスナーの姿が見えてくる。
ベテランの意地か、新世代の野望か――シナのキャリア最終章にふさわしいカードであることは間違いない。
振り返れば、シナの足跡はWWEそのものと重なっている。
.@JohnCena gave @LoganPaul a much needed Attitude Adjustment 😮💨 pic.twitter.com/PuBQt5FwtP
— WWE (@WWE) August 23, 2025
ルースレス・アグレッション時代の突破口を開き、エッジやオートンとの激闘を経て黄金期を築き上げた。
さらにザ・ロックとの世代対決、AJスタイルズやケビン・オーエンズとの攻防、そして世界各地のビッグイベントでWWEの看板を背負い続けた。
ハリウッドでの活躍を経てもなお、WWEのリングに戻る姿勢は、彼がいかに“ユニバース”を大切にしているかを物語っている。
そんなシナがキャリアの終盤に選んだのは、ヒールとベビーを行き来する“変身劇”だった。
それは、誰よりも観客の感情を揺さぶり、ストーリーを完結させるための決断だったに違いない。
ジョン・シナの物語は、まだ終わっていない。
ローガン・ポールとの一戦を経て、果たして彼は再びWWEの頂点に挑むのか。
そして、ローガンの後には、なんとあの男 ビースト ブロック・レズナーが動き始めている!
いずれにせよ、WWEの歴史において「史上最高のグレーテスト」と呼ばれる所以は、この終盤のドラマにも刻まれることだろう。
“You can’t see me.” 代名詞とも言えるフレーズは、今もなおユニバースの心を熱くさせ続けている!!