シナvsオートンのラストマッチ
二人のライバル対決をリアルタイムで目撃できることに、まず感謝の意を表したいです。
WWE統一王座選手権――ジョン・シナ対ランディ・オートン。
17度の世界王座戴冠歴を誇るシナと、14度の世界王者に輝いたオートン。
プロレス界の歴史に名を刻んできた両雄が、最後であろう二人による王座戦が決定しました。
今夜は祭典後1発目のSmackdown💥
— ABEMAプロレス (@Abema_wrestling) April 26, 2025
WWE統一王者となったジョン・シーナ
ランディ・オートンとの対戦が実現!?
レッスルマニアを経て、新たな物語が動き出す!#アベマでWWE #SmackDown
思えば、シナとオートンの因縁は20年近くにわたります。
共にWWE傘下の「オハイオ・バレー・レスリング(OVW)」で育ち、同時期にWWE本隊デビューを果たしました。
いわば同期の二人は、幾度となく王座を巡り、熾烈な闘いを繰り広げてきました。
特に2007年から2009年にかけては、「今後のWWEを担う二大エース」として、多くのメインイベントで対峙し、数々の名勝負を生み出しています。
2007年の『サマースラム』では、当時WWE王者だったシナに対し、オートンが挑戦者として名乗りを上げました。
結果はシナの勝利でしたが、その後も『アンフォーギヴェン』『ノー・マーシー』と、立て続けに両者は王座を巡って激突します。
特に『ノー・マーシー』では、オートンが王座を獲得した直後、シナの負傷により急遽、空位となった王座戦線で激闘を繰り広げたことが記憶に新しいです。
また、2009年には、名勝負製造機とも言われたアイアンマン・マッチ(60分間試合)でも対戦しました。
ここでは、WWE史に残る激闘の末、シナがオートンを破り、王座を奪還しています。
両者の抗争は、単なる王座争いにとどまらず、世代の代表、闘う哲学、プロレス観のぶつかり合いへと発展していったのです。
そんな二人が、4月最後の『SmackDown』において、再びリング上で対話を交わします。
その姿を見て、改めて私は「WWE、ひいてはプロレスとは、闘いであり、討論(ディベート)である」と強く感じました。
ベースボールでも、サッカーでも、あるいはUFCのような総合格闘技であっても、プロレスが見せることのできる「言葉の闘い」「心のぶつかり合い」は、再現することができません。
リング上で、マイクを握り、自らの主張をぶつけ合い、観客の心をつかむ――プロレス特有の文化です。
とりわけWWEは、その部分を圧倒的に高いレベルで見せてくれます。
英語が分かろうが分かるまいが(笑)、圧倒的なクオリティとパフォーマンスで世界中のファンを引き込む説得力は驚異的です。
これは、ディベート文化が根付くアメリカという国柄も影響しているでしょう。
学校教育においてもディベートが盛んに行われ、自己主張と論理構成力を養う環境が整っているため、レスラーたちも自然と「話して戦う」術を身につけていくのです。
友情も歴史も関係なし。
— WWE Japan (@WWEJapan) April 27, 2025
王座を武器にシナがランディに襲いかかる…😱 #SmackDown pic.twitter.com/WNdsMZEqNV
一方で、日本のプロレスも、そうした素養を持っていると私は考えています。
むしろ日本人は、普段の生活において自己主張を控える傾向があるからこそ、プロレスという非日常の場において、リング上で感情を爆発させる姿が、観客の心に深く刺さるのではないでしょうか。
討論が苦手とされる日本人にとって、プロレスがその役割を一部担うことができれば、さらに素晴らしい文化として発展していくに違いありません。
さて、PLE『バックラッシュ』で行われるシナ対オートンの一戦は、二人にとって何度目のシングルマッチとなるのでしょうか。
もはや正確な数字を数えるのも難しいほど、多くの歴史を積み重ねてきました。
しかし、今回が最後の対決になる可能性が高いと見られています。
名門オートン家――祖父、父もまたプロレス界で名を馳せた家系に生まれたランディ・オートン。
そして「プロレス破壊」を掲げ、旧来の価値観を壊しながらも新たなヒーロー像を築き上げたジョン・シナ。
異なる背景を持つ二人が、今、リング上で最後の決着をつけようとしています。
この宿命のライバル対決が、どのような結末を迎えるのか。キレイな形で雌雄を決することができるのか。
全世界のプロレスファンが、固唾を飲んで見守ることでしょう。
シナ対オートンの王座戦という歴史の証人となれる幸運をかみしめながら、リング上の二人を見届けたいと思います。