サベージキングは何処へいった
かつて、誰もをその暴力性と狂気に畏怖させた男が、いま、新日本プロレスの中心から滑り落ちつつある。
その名はデビッド・フィンレー──BULLET CLUB WARDOGSの首領にして“サベージキング”の異名を持つボスドッグだ。
だが、G1 CLIMAX35におけるフィンレーの姿は、ファンが知るその“王”とは程遠いものだった。
序盤3戦を終えた時点での成績は1勝2敗、タイチの奮闘もあるし、数字がすべてではないにせよ、その内容もまた、王者を名乗るには物足りない。
★セミファイナル
「Aブロック公式戦」
タイチ vs デビッド・フィンレー場内大熱狂の大激戦!
最後はタイチのブラックメフィストが炸裂!2勝1敗に星を伸ばす!
※7.22『G1 CLIMAX 35』仙台大会
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その原因として思われるのが、BULLET CLUB追放を懸けたハウス・オブ・トーチャーとの抗争劇だ。
追放マッチでは勝利こそ手にしたものの、EVILから徹底的な痛打を受け、その直後にはデスマッチ形式の一騎打ちで屈辱の完敗。
あの試合は、試合内容以上に“精神の消耗”が色濃く表れた一戦だった。
本来であれば、敵対する者に暴力で“黙らせる”のがフィンレーの流儀。ところが、EVILとの対戦では、逆に彼自身が痛めつけられ、狂気の象徴だったはずの“暴力”が彼の武器にならなかった。
思えば、フィンレーが勢いをつけたのは昨年のタマ・トンガとの抗争を制した一戦では、驚異的なパワーボムの連発に観る者すべてを唖然とさせた。
さらに今年3月、NEW JAPAN CUPを制覇したその姿は、“戦術と破壊の融合”というに相応しい堂々たるものだった。
リングの中心に立ち、冷たい眼差しで次の獲物を見据える姿に、「フィンレー時代の幕開け」を感じたファンも多かったはずだ。
しかし、今回のG1では、そのオーラは霧散しているような気もしている。
BULLET CLUB WARDOGSを率いるという重責もあるのだろうか、ユニットとしてのカラーを定着させ、荒くれ者たちををまとめあげながら自らもトップを走るというのは、想像以上に過酷な道である。
だが、フィンレーは、何度も底から這い上がってきた男だ。
かつては地味な存在に甘んじていたが、二世レスラーの名に寄りかかることを拒み、己の拳でのし上がってきたその努力と執念が、今のBULLET CLUB WARDOGSを築いたのである。
このG1が彼にとって“タメ”の期間である可能性もある。爆発のために静かに力を溜め込んでいる最中かもしれない。
実際、過去のG1でも、序盤不調から後半に巻き返す選手は数多く存在する。すべては後半戦に懸かっている。
本当に恐ろしいのは、フィンレーが“黙る”時ではない。“黙ったまま壊し始める”時だ。
あの、タマ・トンガを血祭りに上げたバイオレンス。NJCを制した時の、誰も寄せつけなかった強さ。
それらが再び呼び覚まされたとき、リングは再び“王”を認めるだろう。
このままボスドッグ デビッド・フィンレーが終わるわけがない、そう思いたい程にサベージキングの復活が待たれる!!