web analytics

【スパイダーマンノーウェイホーム】時空超えで歴代スパイダーマン3人集結!?

音楽・映画
スポンサーリンク

最高のスパイダーマン集結

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)は、これまでのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の流れの中でも、ひときわ異彩を放つ作品である。

スパイダーマンというキャラクターは、長年にわたり幾度も映画化されてきたが、本作はその“全て”を一つに束ねる、奇跡のような試みを見事にやり遂げている。

筆者は本作を事前情報をあまり入れずに鑑賞したが、正直、驚きと感動の連続だった。星5を上限とする採点システムがあるならば、その枠すら超えてしまうような傑作であると断言したい。

歴代スパイダーマンの“夢の共演”

本作最大の特徴は、歴代のスパイダーマンたちが同じスクリーンに登場するという、まさに夢のクロスオーバーである。

2002年のサム・ライミ版スパイダーマン(三部作)でトビー・マグワイアが演じたピーター・パーカー、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでアンドリュー・ガーフィールドが演じたピーター、そして現在のMCU版スパイダーマンであるトム・ホランド演じるピーター・パーカーが一堂に会する。

それはまるで、時代と次元を超えた“スパイダーマン・サミット”のようだ。

この展開は、いわゆる「マルチバース」という設定によって成立している。

マルチバース(多元宇宙)とは、ひとつの世界(宇宙)だけでなく、無数に存在する平行世界が同時に存在するという概念だ。

もともとは物理学やSFの世界で語られる理論だが、近年のアメコミ映画では頻繁に用いられている。

MCUにおいても、『ドクター・ストレンジ』や『ロキ』などで少しずつ布石が打たれてきたが、ここに来てその真価が存分に発揮された。

マルチバースによって、異なる映画シリーズに属していたスパイダーマンたちが、同一画面上に登場するという大胆な展開が可能となった。

これは単なるファンサービスではない。過去作への深い敬意と、それぞれのピーター・パーカーが背負ってきた「喪失」と「贖罪」の物語が丁寧に再構築されているのだ。

物語の深度とエモーショナルな再会

本作以前のMCU版スパイダーマン、『ホームカミング』や『ファー・フロム・ホーム』は、若々しくポップな学園ドラマの側面が強かった。

面白くはあるものの、過去のスパイダーマン作品にあったような“重み”にはやや欠けていた印象がある。

だが『ノー・ウェイ・ホーム』では一転して、主人公が背負う運命の重さ、人間としての成長、そして大切な人を失う痛みが真正面から描かれる。

序盤こそ高校生らしいトーンがあるものの、中盤以降は歴代ヴィラン(悪役)との緊迫した対峙、そして深い内面描写が続く。

 

グリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)、ドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)、エレクトロ(ジェイミー・フォックス)など、過去作を彩ったヴィランたちが次々と登場し、それぞれの物語に決着をつけていく姿も見応えがあった。

特に印象的だったのは、三人のスパイダーマンが、互いの傷と喪失を語り合うシーンである。

自分の過ちを悔いながらも、次なる世代にその教訓を伝えようとする姿は、まさに「ヒーローの継承」を体現していた。ここでは、ただのクロスオーバー以上の“魂の継承劇”が展開されているのだ。

ヒーローが払った代償

物語の終盤、トム・ホランド版ピーター・パーカーは、自分の存在を“この世界から忘れ去られる”という選択を下す。誰一人、彼のことを知らない世界。

それは、友人も恋人も、家族すらも失うことを意味する。それでも彼は、世界を守るためにその道を選ぶ。

このエンディングは、ある意味で非常に悲劇的でありながらも、真の意味でヒーローとして覚醒した姿を象徴している。

スパイダーマンとは、本質的には「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という哲学を体現する存在だ。その責任を、彼はこれまでで最も過酷な形で引き受けたのだ。

映画館を出る瞬間まで気を抜けない

現代のマーベル映画において、エンドロールの後にも“物語”が続くのはもはやお約束となった。本作でも、最後まで席を立ってはいけない。

途中のポストクレジット・シーンでは、シンビオート(黒い寄生生命体)を示唆する描写が登場する。これは、『ヴェノム』シリーズとの接続を匂わせるもので、次なる展開への期待が高まる。

また、ラストには『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』へと直結する映像も挿入されており、MCU全体の広がりを感じさせる構成となっている。

“掟破り”のカタルシス

過去作品のスパイダーマンを観ていた観客にとっては、感動も二重、三重に広がる。単に“再登場”ではなく、それぞれの物語の“続き”が、この映画で描かれているのだ。

それぞれのピーターが再びスーツを着る理由、その苦悩と決意を知っているからこそ、本作での行動一つ一つが心に響く。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、マルチバースという大胆な設定を活かしながら、ヒーロー映画の枠を超えた深みと普遍性を持った物語を描ききった。

その成功は、決して偶然ではなく、長年にわたる積み重ねと、クリエイターたちの誠意の賜物である。

この作品を観終えたとき、観客は必ずもう一度、過去のスパイダーマンたちに会いたくなる。

そして、また新たな物語の始まりを予感せずにはいられない――それこそが、真に「掟破り」な傑作の証明と思うのだ。