「It’s My Life」が切り開いた新たな時代
「This ain’t a song for the broken-hearted.」
この一節が鳴り響いた瞬間、すべてが変わった。Bon Joviの2000年リリースのシングル「It’s My Life」は、まさにバンドの歴史を塗り替える“起死回生”の一撃だった。
この曲は今や、日本でも多くの人に知られている。お笑い芸人が舞台の出囃子に使い、CMではグラスをぶつけ合うビールの泡とともに鳴り響く。
けれど、この曲が生まれた背景には、栄光と挫折のドラマがあった。
90年代初頭、Bon Joviは「Livin’ on a Prayer」や「You Give Love a Bad Name」といった数々のアンセムを生み出し、アメリカン・ロックの象徴として君臨していた。
しかしその後、バンドは転換期を迎える。1995年にリリースされたアルバム『These Days』は、内省的で成熟した作品だった。メロディは美しく、歌詞も深い。
批評家からは高評価を受けたが、バンドが築き上げてきたアリーナ・ロックの文脈からは逸れていたのか、セールス的には伸び悩んだ。
当時のBon Joviは、“終わったバンド”というレッテルすら貼られつつあった。しかし、彼らはそのまま終わるバンドではなかった。
2000年、21世紀の幕開けとともに発表されたアルバム『Crush』。
そのリード・シングルとして放たれたのが、「It’s My Life」だった。サウンドは時代の波を巧みに取り入れ、サンプリング技術やエフェクトを駆使しながらも、根底にはブレないロック魂が燃えていた。
何より、この曲でJon Bon Joviは宣言する。「It’s my life, It’s now or never.」と。
Happiest birthday to our wonderful amazing Jacob pic.twitter.com/JJcLBkQBzc
— Jon Bon Jovi (@jonbonjovi) May 7, 2025
「今を生きる」というこの直球のメッセージは、世紀をまたぐ不確実な時代に、世界中のリスナーの胸に突き刺さった。歌詞中の“Tommy and Gina”は、かつての代表曲「Livin’ on a Prayer」に登場した若いカップル。
彼らが再び歌詞に登場することで、Bon Joviが自らの過去と向き合い、そして未来へと踏み出す決意を見せたとも言える。
私が東京ドームで行われた『Crush』ツアーに足を運んだのも、この曲の衝撃があったからだ。
開演と同時に炸裂したイントロ、その瞬間、5万人を超える観客の心が一つになった。Jonの声が響くたびに、私たちは自分の人生を肯定されたような気がした。
たった3分強のロックソングに、これほどのエネルギーと解放感が詰まっていることに驚かされた。
「It’s My Life」は、ただのヒット曲ではない。それはBon Joviというバンドが、時代の荒波を乗り越えてなお、自分たちのアイデンティティを守り、なおかつアップデートできることを証明した歴史的楽曲だ。
そして同時に、聴く者一人ひとりの人生にも寄り添ってくれる。
年齢や立場に関係なく、「自分の人生は自分のものだ」と、背中を押してくれるのだ。
#ボンジョヴィ花火
— 【BON JOVI 花火】公式 (@HANABI_BONJOVI) October 5, 2024
宮崎公演ご来場ありがとうございました!#BonJovi#BonJoviForever#fireworks#fireworkshow#日本旅行#花火 pic.twitter.com/UMNNuyTrB0
この曲を機にBon Joviは、第二の黄金期を迎えることとなる。『Crush』は全世界で1000万枚以上を売り上げ、グラミー賞にもノミネートされた。
以後もバンドは安定した人気を保ち続け、ロック界のレジェンドとしてその存在を不動のものにしていく。
あの瞬間、あの曲がなければ、Bon Joviの物語は違ったものになっていたかもしれない。
だが彼らは、見事に流れを変えた。「It’s My Life」は、バンドの再生の象徴であり、今なお色褪せることのないロックの旗印だ。
そして私たちもまた、この曲を聴くたびに思わせてくれる「人生は一度きり、自分らしく生きろ」と力強く問いかけてくれる最強曲だ。