アメリカをもっと知るべきでは?
2025年、世界は大きな分岐点に立っている。ロシアによるウクライナ侵攻は長期化の一途を辿り、イスラエルと中東諸国との緊張は再燃。
アジアでは中国の動向に国際社会が神経を尖らせている中、アメリカは再び“トランプの時代”へと回帰した。
第2次トランプ政権の誕生により、国際政治の重心が大きく揺れている。
バイデン政権下で築かれた多国間協調体制は崩れ、アメリカ・ファーストを掲げる強硬な単独主義が、再び世界秩序に波紋を呼んでいる。
だが、そうした激動の世界を目の前にして、果たして我々日本人は、どれほどアメリカという国家の“今”を理解しているのだろうか。
単なる「友好国」や「最大の貿易相手国」としてのステレオタイプな認識で済ませてはいないだろうか。
本稿では、アメリカという国が抱える現代的課題、トランプ再登場による日本への影響、そして日本の報道が果たすべき責任について、多角的に掘り下げていきたい。
トランプ政権の再来──アメリカが再び世界と対立?
2025年、ドナルド・トランプは再び大統領の座に返り咲いた。
かつての政権と同様に、「アメリカ・ファースト」を標榜し、国際協調よりも国内の経済成長と雇用創出を最優先する政策を打ち出している。
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16(水)の放送をNHKプラスで配信中【解説】
①トランプ大統領の姿勢転換 ロシアの受け止めは
②イスラエル 連立政権揺るがす「超正統派」【特集】
“トランプvsマスク” 対立の行方はhttps://t.co/JWBcPcAqyJ#望月麻美 #川口由梨香 pic.twitter.com/W7wj34bdA9— NHK国際報道 (@nhk_kokusainews) July 16, 2025
貿易赤字解消を目指した相互関税政策は復活し、自動車、鉄鋼、半導体など多くの分野で日本やEU、中国に対して再び高関税を課す方針が示された。
2020年代初頭に一時緩和された通商摩擦は、再び激しさを増している。
日本にとってもこの動きは無関係ではない。
トヨタ、日産、ホンダといった自動車産業をはじめ、多くの輸出企業がアメリカ市場に依存しており、関税引き上げは直撃する。
しかし、日本のメディアが報じるのは、せいぜい「関税率30%の可能性」や「日米自動車交渉の行方」といった断片的な内容ばかり。
背景にあるアメリカ国内の政治状況や国民の分断、経済格差、地方の不満、SNSによる分断情報戦略などには、ほとんど触れられていない。
気候変動、銃規制、移民──アメリカの抱える根源的課題
アメリカも非常に多くの内部問題を抱えている
まず、気候変動による自然災害だ。
山火事、竜巻、干ばつ、洪水といった極端気象が毎年全米各地を襲い、特に西海岸の森林火災や南部のハリケーン被害は深刻さを増している。
地球温暖化を“神話”と断じていたトランプ氏の再登場により、環境保護政策は後退しつつある。
次に銃規制。2024年には、テキサス州やフロリダ州などで大規模な銃乱射事件が相次いだが、銃規制を訴える声は保守派によって潰され、むしろ「自己防衛の自由」がさらに強調される傾向が強まっている。
そして移民問題。中南米からの移民の流入は止まらず、アメリカ国内の社会的対立を激化させている。
州によっては移民排斥を掲げる政策が次々と導入され、全米で抗議デモや人種対立が再燃している。
これらの問題は、アメリカという国家の根本的な“断層”を示している。
しかし、我が国ではそのような複雑な事情は報道されることが少なく、むしろ「大谷翔平が何本打った」「ハリウッドのゴシップ」などが取り上げられているのが現状ではないだろうか。
石破茂氏とトランプ大統領──外交の真の役割とは何か
日本国内で、トランプ大統領と比較的良好な関係を築いたとされるのは、安倍晋三元首相である。
一方で、石破茂氏は安倍路線とは一線を画し、独自の安全保障観と冷静なアメリカ理解を持つ政治家として知られている。
石破氏はかつて防衛庁長官を務めた経歴からも分かる通り、アメリカ一辺倒の安全保障観ではなく、東アジアの中での日本の立ち位置、対中・対韓とのバランス、そしてアメリカとの対等な交渉を訴えてきた。
トランプ氏「モスクワ標的自制を」 ウクライナへ長射程兵器供与せずhttps://t.co/HY7JVpCVnu
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) July 15, 2025
現実的で地政学的な視点を持った石破総理が政権の中枢に立ち、トランプ再登場による対日圧力に対しても、より柔軟かつ戦略的な外交対応に期待したいが、今はどうだろうか。
しかし、そのためには国民自身が「外交とは何か」「なぜ皇室が各国を訪問するのか」といった国際社会との接点に対して、より深い関心と理解を持つことが必要である。
テレビメディアの堕落──報道に責任はあるか
ところが、現在の地上波テレビ、特にフジテレビなど一部のキー局は、国際報道や硬派な分析を極端に避け、娯楽番組やバラエティに終始しているのが現実だ。
アナウンサー部門や報道局は形骸化し、公共の利益よりも視聴率とスポンサー重視の番組作りに明け暮れている。
「報道」を名乗りながら、実際には芸能人の不倫や番組改編情報、野球選手のインスタ投稿ばかりを取り上げているのだ。
中居正広、第三者委員会にまたも “反撃”…終わらぬ「論争」にSNSで冷めた声#SmartFLASH #中居正広 #フジテレビ #第三者委員会 #論争 #SNShttps://t.co/hgSX9DLH7k
— SmartFLASH (@info_smafla) July 16, 2025
こうしたメディアの姿勢が、国民の「知る権利」を奪い、ひいては日本の国際的な感度や判断力の劣化につながっている。
日本郵政のように形だけ民営化されても、中身が変わらなければ、組織は生き返らない。
提言──日本のメディアは世界と向き合うべきだ
いま、日本のメディアがやるべきは、“新しいテレビの形”を提示することだ。
もしフジテレビが本気で再生を目指すのであれば、欧米やアジアのニュース番組を積極的に輸入・放送し、「世界の今」を国民に伝えるチャンネルへと変貌すべきである。
アメリカの「NBC Nightly News」のように、硬派でありながらダイナミックな映像構成で視聴者を引き込む手法もある。
単なる文字ニュースではなく、映像と音楽、テンポの良い編集で、視覚的に訴える報道番組は日本でも成立するはずだ。
また、アメリカの歴史ドキュメンタリーや、議会中継、社会問題を扱った討論番組、さらにはWWEやAEWなどのプロレス番組を通して、アメリカの「文化」や「思想」に触れることも、外交や国際理解の一歩になる。
どのチャンネルを回しても(そもそも回されていないが)似たような顔ぶれ、似たようなコメントしかないなら、いっそフジテレビには「違う局」であることを徹底してほしい。
我々が世界と向き合うために
日本が孤立を避け、世界と対等に渡り合うためには、国民一人ひとりが「外を見る目」を持つことが不可欠だ。アメリカとの関係は、もはや経済や軍事だけでは語れない。
多様な価値観、社会構造、民主主義のリアリティを知ることが、今後の日本にとって何より重要である。
外務大臣が世界を飛び回る理由、皇室が各国に出向く意味。
それらを「外交儀礼」と片付けるのではなく、「なぜ日本が世界と向き合うのか」という本質を、日本人は真剣に考えるべき時代に来ているのだ。
アメリカを知らずして、日本はこれからの世界を生き残ることはできないだろうし、報道もまた、そして、国民の意識も変わらねばならない。