後楽園デ・ハポン大合唱
「いやぁ、ついにやりましたね」
何がですか?
「内藤哲也ですよ。GHCヘビー級王座、初挑戦ですよ」
それは知ってます。
「で、どうなったと思います?」
……まさか。
「まさかじゃないですよ。獲りました。
しかも初挑戦、一発ですよ。
「一発で?」
一発で。
「じゃあ、NOAHに来てから、ずっと狙ってたんですかね」
いや、本人はそんなこと言ってないでしょうけど、結果的に見れば完全に狙い澄ました感じになってますよ。
今回の内藤は、とにかく動いた。
これまでNOAHで見せてきた試合では、どこか一瞬、動きが止まるような場面もあった。
ところが今回は違った。
リングを縦横無尽に動き、相手を翻弄し、そして何度も各種デスティーノを繰り出していく。
「デスティーノ祭りですか?」
祭りって言うな。
GHCヘビー級のタイトルマッチですよ。
「でも、いろんなデスティーノが出たんでしょ?」
出ましたよ。
そして最後に待っていたのが、まさに今回のハイライト。
正調式デスティーノの体勢から、さらに旋回してのデスティーノ!
「旋回?」
そう。
「内藤さん、最後だけ遊覧飛行してません?」
してません。
あれは勝利をもぎ取るための必殺技です。
シェイン・ヘイストも素晴らしかった。
王者として内藤を真正面から受け止め、試合を成立させた。
だからこそ、最後の一撃には重みがあった。
そして何より、この勝利にはもう一つ意味がある。
内藤哲也は、新日本プロレス時代にシングルマッチでシェイン・ヘイストに敗れている。
つまり今回は、GHCヘビー級王座を奪取しただけではない。
過去の借りまで、きっちり返した。
「じゃあ、タイトルと借金の取り立て、両方成功したんですね」
言い方!
でも、内藤哲也という男にとっては、まさにそういう勝利だったのかもしれない。
そして試合後。
後楽園ホールに響き渡ったのは、もちろん――
「デ・ハ・ポン!」
出ましたよ。
NOAHのリングで、デ・ハ・ポンですよ。
「ここNOAHですよね?」
NOAHです。
「新日本じゃないですよね?」
NOAHです。
「でもデ・ハ・ポン?」
デ・ハ・ポンです。
完全に、内藤哲也ワールド。
しかも凄かったのは、会場の内藤コール。
誰よりも大きい。
GHCヘビー級王座を獲ったばかりの男に対して、後楽園ホールが一気に内藤色へ染まっていく。
NOAHに参戦したのではない。
いつの間にか、NOAHの中心に自分のリングを作り始めている。
そして、ここからがまた内藤らしい。
試合後のバックステージで、NOAHの珠玉のシングルリーグ戦への不出場を宣言。
「王者なのに出ないんですか?」
出ないんですよ。
「普通は出るでしょ」
普通ならね。
「王座獲ったんですよ?」
だからこそ出ない。
「意味が分からないですよ」
それが内藤哲也なんですよ。
決められた道を歩くんじゃない。
自分で道を曲げる。
そして、周囲が「えっ?」となったところで、さらに先へ進んでいく。
まさに制御不能なカリスマの本領発揮である。
初挑戦でGHCヘビー級王座を奪取。
シェイン・ヘイストへの借りも返した。
デ・ハ・ポンで後楽園を染め上げた。
そして、リーグ戦には出ない。
「これ、次の防衛戦の相手、誰になるんですか?」
そこですよ。
誰が内藤哲也の前に立つのか。
試合後に内藤哲也の前に誰も現れなかったのは、次の挑戦者はN1優勝者と誰もが分かってるんでしょう。
そして内藤は、NOAHの中心部へどこまで踏み込んでいくのか。
「もしかして、NOAHに乗り込んできたんじゃなくて……」
ん?
「NOAHそのものを制御不能にしに来たんじゃないですか?」
……それ、かなり内藤哲也っぽいですね。
GHCヘビー級王座という新たな勲章を手にした内藤哲也。
しかし、本当の物語はここからなのかもしれない。
初挑戦、一発奪取。
その次に待っているのは――
初防衛戦。
そして、内藤哲也がNOAHの歴史にどんな爪痕を残すのか。
その答えは、勿論、トランキーロあっせんなよ!!
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