再び後藤革命の狼煙
新日本プロレスの秋が、いよいよ熱くなってきました。
神戸ワールド記念ホールで行われるIWGPヘビー級王座戦。
王者・辻陽太に挑むのは、荒武者・後藤洋央紀。
このカードだけを見ると、「また後藤と辻か」と思う人もいるかもしれません。
しかし、今回は単なる再戦ではありません。
リング上ではIWGPを懸けた戦い。
リング外では舌戦。
そしてリングの外のさらに外では、ハリウッド映画『Street Fighter』。
もう情報量が多いんですよ。
プロレスのタイトルマッチを見に来たら、なぜかエドモンド本田までついてくる。
しかも、そのエドモンド本田を演じているのが後藤洋央紀本人。
……本人なんですよ。
CGでもなく、そっくりさんでもなく、荒武者本人です。
「荒武者」一日にしてならず
後藤洋央紀というレスラーは、いきなり現在の姿になったわけではありません。
若手時代から身体能力と闘志を磨き、新日本のジュニア戦線も経験。
海外修行を経てヘビー級へ転向すると、そこから一気に「荒武者」として存在感を強めていきました。
長髪、袴、鋭い眼光。
そして、相手を真正面から叩き潰すようなファイト。
後藤の魅力は、華麗なテクニックで相手を翻弄するタイプとは少し違います。
「俺はこれで行く」
そう言わんばかりに、ラリアット、蹴り、投げ、そしてGTR。
真正面からぶつかっていく。
これが後藤洋央紀です。
そして、そんな荒々しいスタイルを持ちながら、後藤は実績も残してきました。
G1 CLIMAXでは初出場でいきなり優勝。
NEW JAPAN CUPも複数回制覇。
WORLD TAG LEAGUEでも優勝を重ねる。
つまり後藤は、決して「タイトルを取れなかったレスラー」ではありません。
むしろ、数多くの実績を残している超一流レスラーです。
問題は――
IWGPヘビー級の頂点だけが、どうしても遠かった。
ここなんですよ。
何度挑んでも届かなかったIWGPヘビー
後藤のキャリアを語るうえで避けて通れないのが、IWGPへの挑戦の歴史です。
何度も挑戦する。
何度も惜しいところまで行く。
しかし、最後の最後でベルトに届かない。
そして、その挑戦回数はいつしか「後藤のIWGP挑戦」というだけで一つの物語になるほどでした。
棚橋、オカダ、その他の時代のトップレスラーたちと激突してきた。
特にオカダとのIWGP戦では、あの「写経」ペイントでリングに上がったこともありました。
そこまで覚悟を見せても、ベルトには届かない。
普通なら、心が折れてもおかしくありません。
ところが後藤は、折れない。
いや、折れているのかもしれない。
でも、また立ち上がる。
これが荒武者です。
そして、長い時間を経て、ついに大きな転機が訪れます。
IWGP世界ヘビー級王座を懸けたザック・セイバーJr.との戦い。
そこで後藤はGTRを決め、悲願のIWGP世界ヘビー級王座初戴冠を果たしました。
しかも、実に9度目のIWGP挑戦での戴冠。
これは単なる「ベルトを取った」という話ではありません。
長年積み重ねてきた敗北そのものを、最後にひっくり返した瞬間だったんです。
勝利後には亡き父へ「オヤジ、とったぞー」と叫び、子どもたちをリングへ上げる。
そして、
「IWGPのGは後藤のG!」
と叫ぶ。
……ここまで来ると、もうプロレスですよ。
いや、映画ですよ。
でも、ここからさらに映画が本当にやってくるんですよ。
そしてエドモンド本田
後藤洋央紀が、まさかのハリウッド映画出演。
作品は、あの『Street Fighter』。
そして演じるのは、力士ファイター・エドモンド本田。
これがもう、異常にハマっている。
エドモンド本田といえば、日本を代表する相撲ファイター。
張り手。
百裂張り手。
スーパー頭突き。
そして、どっしりとした体格。
……いや、後藤にやらせるでしょう、それ。
他に誰がいるんですか。
そして世界的なゲームシリーズの実写映画で、エドモンド本田を演じる。
さらに共演者を見ると、WWEのトップスターとして知られるローマン・レインズとコーディ・ローデスも出演。
後藤はエドモンド本田。
コーディはガイル。
ローマン・レインズは豪鬼。
……プロレスファンからすると、もうキャスティングだけでニヤニヤしてしまうわけです。
「WWEのトップスターが映画に出る」
「新日本の荒武者も映画に出る」
「しかも同じ作品にいる」
何なんでしょうね、この世界線。
「辻陽太vsエドモンド本田」ではない
そして、このエドモンド本田ネタが、神戸決戦にも侵入してきました。
辻陽太との前哨戦。
後藤がエドモンド本田ばりの手刀を繰り出す。
辻も「本物は違う」と警戒する。
さらに後藤は、辻のゲーム好きにも噛みつき、
「ファイナルファンタジーじゃなくてストリートファイターだろ!」
といった具合に、エドモンド本田を完全に自分の武器にしてしまっています。
ここが今の後藤の面白いところです。
昔の後藤なら、
「IWGPを取る」
「俺がトップだ」
と、ひたすらリングの上で自分を証明していた。
ところが今の後藤は、プロレスだけではなく、自分のキャラクターそのものを楽しんでいる。
荒武者なのにエドモンド本田。
硬派なのにゲームネタ。
ベテランなのにSNSでも存在感を出す。
そして、それを辻が突っ込む。
この構図が実に面白い。
後藤はSNSに入り浸りすぎ
一方の辻陽太も黙っていません。
後藤に対して、SNSに入り浸りすぎている、考えることを放棄しているようだ、といった趣旨の発言をぶつける。
すると後藤も、
「王者なのに自信がなさそうだ」
「もっとトランキーロでどっしり構えろ」
と返す。
これですよ。
ベルトを持っている辻と、挑戦者の後藤。
普通なら王者が余裕を見せ、挑戦者が牙をむく。
ところが今回は、挑戦者の後藤のほうが妙に落ち着いている。
王者の辻が後藤を意識している。
後藤は後藤で、
「そんなに俺のこと気にしなくていいだろ」
という雰囲気。
立場が逆転しているようにも見えるんです。
もちろん、リングに入れば話は別。
辻は現在の新日本を背負うべき若き王者。
身体能力、パワー、攻撃力。
そして何より、かつて後藤をNEW JAPAN CUPの決勝で破った実績もある。
つまり辻にとって後藤は、単なるベテランではありません。
自分のキャリアの中で、すでに一度倒している相手。
だからこそ、今度は「王者として倒す」という意味が生まれる。
「IWGPヘビー級」奪取への宿題
ここが今回のタイトルマッチで非常に重要なポイントです。
後藤はすでにIWGP世界ヘビー級王座を獲得しています。
つまり「IWGPを一度も巻いていない男」では、もうありません。
ところが、現在のIWGPヘビー級王座は、後藤が戴冠したベルトとは別の歴史を歩んでいます。
そのベルトを、後藤はまだ巻いていない。
だからこそ、後藤自身も「実感が湧かない」という趣旨の話をしています。
これは単純なベルトの問題ではありません。
後藤洋央紀という男にとって、IWGPヘビー級という名前には、長年の苦闘が染み付いている。
何度も挑戦した。
何度も敗れた。
ようやくIWGP世界ヘビー級を取った。
それでも今、再び「IWGPヘビー級」を目の前にしている。
これが面白い。
まるで、過去から未来へ続いていたはずの道が、一度ぐるっと回って、もう一度後藤の目の前に戻ってきたような感覚です。
「後藤革命」はまだ終わらない
そして後藤といえば、もう一つ忘れてはいけないのが「後藤革命」です。
後藤はこれまで、何度も自分自身を変えようとしてきました。
ユニットを変える。
スタイルを変える。
新しい技を身につける。
海外で鍛える。
そして、何度倒れても立ち上がる。
後藤のキャリアは、ある意味で「革命の繰り返し」です。
ただし、本当の意味での後藤革命とは、派手な革命宣言ではないのかもしれません。
「もう一度、頂点を目指す」
それそのものが後藤革命なのではないでしょうか。
若い頃なら、頂点を狙うのは当然です。
しかし、長いキャリアを積み、何度もIWGPに挑み、敗北も経験した後藤が、それでもなお頂点を目指す。
これが一番荒武者らしい。
両国で大岩陵平が待つ
さらに、もし後藤が神戸でIWGPヘビー級王座を奪取した場合、その先にはG1 CLIMAX優勝者・大岩陵平が待つことになります。
つまり、仮に後藤が勝てば、神戸で終わりではありません。
すぐに次の戦いが待っている。
若い世代の大岩と、ベテランの後藤。
ここにも新日本の「世代」というテーマが浮かび上がってきます。
若手が上がってくる。
ベテランは、それを迎え撃つ。
そしてベテラン自身も、まだ頂点から降りるつもりがない。
これほどプロレスらしい構図はありません。
後藤が勝てば、
「荒武者、まだ終わってないぞ」
というメッセージになる。
辻が防衛すれば、
「新時代は俺たちが作る」
という流れをさらに強めることになる。
だから神戸は、単なるIWGP戦ではありません。
後藤洋央紀の過去。
辻陽太の現在。
そして新日本プロレスの未来。
この三つが一つのリングに集まる試合なのです。
エドモンド本田で・・それはない
……とはいえ。
ここまで真面目に語っておいてなんですが。
一番気になるのは、
後藤はエドモンド本田として神戸に来るのか。
ということですよ。
来ません。
たぶん普通に荒武者です。
でも最近の後藤を見ていると、
「エドモンド本田式手刀!」
とか、
「百裂張り手!」
とか、
そういうことをやってきても不思議ではない。
いや、IWGP戦ですよ。
エドモンド本田のゲームモーションをやる場所じゃないんですよ。
でも後藤洋央紀ならやりそうなんですよ。
そこが困るんです。
いや、困らない。
むしろ見たい。
後藤洋央紀「今が全盛期」
後藤洋央紀は、長いキャリアの中で何度も「全盛期」と呼ばれる瞬間がありました。
G1を初出場で制した時。
NEW JAPAN CUPを制した時。
数々のトップレスラーと激闘を繰り広げた時。
そして、悲願のIWGP世界ヘビー級王座を獲得した時。
しかし、現在の後藤には、若い頃とは違う強さがあります。
それは経験です。
負けたことがある。
頂点を逃したことがある。
長い停滞も経験した。
それでも戻ってきた。
そして今度は、映画というまったく新しい舞台まで手に入れた。
これは若いレスラーには簡単に作れないキャリアです。
だからこそ、今の後藤洋央紀は面白い。
強さだけではない。
過去がある。
失敗がある。
復活がある。
そして、エドモンド本田までいる。
……最後だけ急にゲームなんですよ。
でも、それでいい。
それこそが、今の後藤洋央紀です。
荒武者、再びIWGPヘビーへ
神戸ワールド記念ホール。
王者・辻陽太。
挑戦者・後藤洋央紀。
若き王者が時代の現在を守るのか。
それとも、何度も頂点に跳ね返され、それでもリングに立ち続けてきた荒武者が、再びIWGPの歴史を動かすのか。
そして、その先には大岩陵平が待っている。
さらに世界では『Street Fighter』が公開され、後藤洋央紀=エドモンド本田という、これまで誰も想像しなかった新しい一面まで広がっている。
後藤のプロレス人生は、まだ終わっていません。
むしろ今になって、過去のすべてがつながり始めているようにも見えます。
G1初優勝。
NEW JAPAN CUP制覇。
幾度ものIWGP挑戦。
敗北。
停滞。
復活。
悲願のIWGP世界ヘビー級王座戴冠。
そして、エドモンド本田。
ここまで来たら、もう一度くらい革命を起こしてもいいでしょう。
荒武者・後藤洋央紀。
神戸で再びIWGPを手にすれば、それは単なる二度目の戴冠ではありません。
「まだ俺の時代は終わっていない」
そうリング上で証明する瞬間になる。
辻陽太が新時代の扉を閉じるのか。
それとも後藤洋央紀が、その扉を蹴破ってしまうのか。
神戸決戦は、まさに「現在の王者」と「積み重ねてきた歴史」の衝突です。
そして、その荒武者の背後には――
なぜかエドモンド本田がいる。
……もう何なんですか、この男。
でも、それが後藤洋央紀なんですよ。
荒武者・後藤洋央紀。
IWGPを追い続けた男が、今度はIWGPから追われる側になるのか。
それとも、辻陽太が王座を守り、新しい時代をさらに前へ進めるのか。
答えは神戸のリングだけが知っています。
そして後藤には、もう一つだけ言っておきたい。
エドモンド本田でも、荒武者でもいい。
とにかく神戸では、後藤洋央紀として思い切り暴れるのか、要注目!!


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