かつて義兄弟だった
プロレスには、リング上の攻防だけでは語りきれない「情」がある。仲間だった、共に過ごした時間がある、互いを知り尽くした者同士がぶつかるとき、それは単なる星の奪い合いではなく、人生と人生のぶつかり合いになる。
G1 CLIMAX 35、Aブロック公式戦にて、SANADAがタイチに放った強烈過ぎるギターショット!
スカルエンドでも、華麗なシャイニングウィザードでも、デッドフォールでもない。
持参したアコースティックギターによる無慈悲なフルスイング。
SANADAは“元兄貴分”タイチの頭に非情のバイオレンスを叩き込み、勝利を掴んだ。
【新日本・G1】SANADA さわやかな白シースルーで登場…因縁タイチをギターショットでKO|東スポWEB #njpwhttps://t.co/AHnh0A1J61
— 東スポ プロレス格闘技担当 (@tospo_battle) July 27, 2025
技でもなければ美学も感じさせない、ある意味でSANADAらしくない一撃。
かつて、ふたりは「Just 5 Guys」、さらにその前身である「Just 4 Guys」の中心メンバーだった。
内藤哲也率いるロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンから独立し、新たな道を切り拓こうとするSANADAに対し、タイチは真っ先に手を差し伸べた存在だった。
あの頃のSANADAは、言葉少なく、心を開くタイプではなかった。
そんな彼にとって、タイチの兄貴肌の性格はある意味、救いだったのかもしれない。
和やかなやりとりも面白く「新日ちゃんぴおん。」やタイチチャンネルなどのSANADAの入社面接コント(笑)やDOUKIとイチャモンヤンキー、金丸の“テッテレー”等などファンを楽しませてくれた。
だが、グループはやがて空中分解し、金丸がJust 5 Guysを離脱し、館へ行くと残されたタイチたちには苦しい時間が待っていた。
更にSANADA、DOUKIといったメンバーが次々にハウス・オブ・トーチャーへと流出していったことで、タイチは精神的に孤独な戦いを強いられたかもしれない。
時が過ぎていき迎えたこのG1。タイチとSANADAは、互いに4点と苦しい星取ながら、それぞれが異なる個性でブロックを盛り上げてきた。
SANADAは新日随一のファッショニスタとして、リング上ではスナイパーのように一撃必殺を狙い、リング外では相変わらず感情を表に出さない冷徹さを保ち続ける。
一方でタイチは、今や観客もファンも熱くなれるあ感情移入できる聖帝レスラーとなった。
15年以上前
そんな事もあったなぁアントキやってた🤝🪽が自然と蘇った https://t.co/thYZeE1SGA
— タイチ (@taichi0319) July 28, 2025
プロレスの世界では、「過去」は時に敵にも味方にもなる。
かつての関係を捨てきれずに戦う者もいれば、それを完全に切り捨てて勝利だけを目指す者もいる。
SANADAが後者であるならば、彼の道はますます孤独で、しかし強さを手にする道でもある。
一方のタイチは、今も仲間という言葉に重みを感じ、信頼や義理を大切にするタイプやもしれない。
今回の敗北は公式戦としての1敗だけではなかったかもしれない。
「友情」と「裏切り」、「信頼」と「非情」・・・それらが交錯した試合は、G1の星取表以上の意味を持ち、ファンの記憶に刻まれるであろう、感情と感情のぶつかり合い。
G1の戦いは続く、両者とも勝ち抜けには黄色信号が灯っているが、残り試合での逆転劇は十分にあり得るだけに、メビウスの輪のような二人が再び、巡り合うのか注目したい!!